医師という職業は、人の役に立つことができ、社会的な信用も高い職業です。

仕事にやりがいを感じ、誇りを持っている医師の皆さまの中には、わが子も医師になってほしいと思われる方も多いと思います。

そこで気になるのは、お金のこと。子供を医学部に通わせるには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

医学部入学のためにかかる費用

医師の皆さまには説明不要な話ですが、医師になるためには、まず大学の医学部もしくは医科大学に入学して、6年間かけて学び、課程を修了する必要があります。そして、医師国家試験に合格して医師免許を取得しなければなりません。

まずは医学部へ入学しなければなりませんが、これは簡単なことではありません。文部科学省の発表によると、2023年度入試にて医学部医学科を置く大学(全81大学)の入学定員は9,384人で、平均合格率は男子12.8%、女子12.2%だったとのことです。超難関です…。

そんな難関の医学部に合格するためには、専門の対策が必要となります。おそらく医学部の受験生の大半は、進学塾や家庭教師、医学部専門の予備校などを利用していると思います。

つまり、医学部に入る前からすでに費用が発生するのです。では、医学部専門の予備校に通う場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。一般的な予備校とは、どれくらい違うのでしょうか。

一般的な大学受験のための予備校の場合、年間でおよそ100万円前後かかると言われています。もちろん、様々なコース選択や講座数などによって変わってきます。医学部専門の予備校の場合は、なんと年間300万円~600万円が相場と言われています。

これは、一般的な予備校に比べて、少人数制や個別指導などで個人に合わせたカリキュラムを組むなど、生徒を手厚くサポートしたりするため、必然的に費用が高くなるのでしょう。

それでも、医師になるためには医学部に入学しなければ始まらないので、わが子が医師になるために必要な費用のひとつとして準備しておいたほうがよいでしょう。

国公立か、私立か?

どの大学の医学部を受験するか選択する際、まず「国公立」か「私立」か、という選択肢があります。それによって、学費は大きく変わってきます。

国立大学の医学部の学費は、6年間で約350万円です。国立大学は、国により入学金と授業料の標準額が定められていますので、基本的にはどの大学も同じ金額となります。

公立大学は都道府県や市町村が運営する大学で、基本的には国立大学の授業料を基準としていますが、その地域出身者であるかどうかで入学金の金額が変わったりします。

では、私立大学の学費はどれくらいかというと… 約2,000万円~4,500万円です。平均で約3,200万円~3,300万円ですので、国公立大学の約10倍です!

( 2023年度 ※その他、諸会費等あり。 詳細は各大学のHPにてご確認ください。)

医学部は学費が高い!というイメージは、私立大学医学部の学費の高さによるイメージだと言えるでしょう。

私立大学を選択する場合は、経済的な余裕がかなり必要となってきます。

また、おそらく複数の大学を受験するでしょうから、その分の受験料や交通費・宿泊費を要することも想定しておきましょう。

医学部入学後にかかる費用

医学部に無事入学できたら、学費以外にも様々な費用が必要となることも押さえておかなければなりません。

教科書・参考書代や実習に必要な費用(聴診器や白衣等)が発生しますし、一人暮らしをすることになれば生活費も必要となります。

1年間の生活費が約150万円と想定すると、6年間で約900万円。それなりの金額になります。

また、医師国家試験のための対策費用や受験料、合格後には医師免許登録料など、なにかと細かな出費もあるのです。

意外な出費として、部活動費をあげる医大生もいるようです。医師の皆さまはよくご存じかもしれませんが、医学部は部活動が盛んで、約8割の学生が部活に所属していると言われています。

運動部が多く、遠征試合や合宿、飲み会などの出費がありますが、医学部の先輩とのコネクションができたりするメリットもあるのでしょう。

医大生は学業に忙しく、前述のように部活動などもあり、アルバイトをする時間も限られますので、親の援助は必須となることでしょう。

学費ゼロも可能!?

わが子を医学部へ通わせるにはとにかくお金がかかる、という話をしてきましたが、それならお金持ちの子供しか医師になれないのかというと、そんなことはありません。
学費が免除される医学部も存在します。

以下の3大学ですが、卒業後の進路に条件がありますので、注意が必要です。

自治医科大学僻地などの地域医療に従事する医師の養成を目的としている大学。
卒業後9年間、指定された僻地などの公立病院等に勤務すれば学費は免除されます。
産業医科大学労働環境と健康に関する分野(産業医学)の振興と産業医の養成を目的とする大学。卒業後9~12年間、産業医等の職務に従事すれば、学費の約2/3が免除されます。
防衛医科大学校医師である幹部自衛官、すなわち自衛隊所属の医師を養成する目的の大学。
学生は防衛省職員(特別職国家公務員)となるため、毎月所定の手当が支給され、学費も免除されますが、卒業後9年間の自衛隊勤務が条件となります。

その他にも、奨学金制度や教育ローン、学資保険など、学費を工面する方法はありますので、様々な方法を調べておくとよいでしょう。

まとめ

医学部入学前から入学後にかかる費用について述べてきましたが、医学部を目指すために、小学生のうちから塾へ通わせたり、中高一貫のハイレベルな教育を受けられる私立の進学校へ通わせたりするケースもあると思います。そうなれば、さらに多額の教育費を準備しておかなければならないでしょう。

子供を育てていくには、教育費だけ確保していればよいわけではありませんし、子供が念願の医師となり独立した後のご自身の老後のセカンドライフにもお金が必要です。将来に向けて早めに計画を立てて、資産を形成しておくことが重要です。

コツコツ貯蓄することも大切ですが、より効率よく資産を形成・運用できる方法や、上手な節税の方法なども探しておくとよいでしょう。